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〈体験談〉看護の現場は動画や映像の導入で現場はどう変わったか?

私は看護学生だった頃から看護師として勤務する現在に至るまで、様々な場面で動画や映像の恩恵を受けてきました。YouTubeやインターネット上での動画コンテンツ・アプリが当たり前になっている現代よりもっと前から、実は医療や介護の現場と動画や映像は深い関わりがあり、今後はさらに役割が拡大すると思います。
しかし、実際に看護の現場で動画や映像を使用する上で見えてきた課題や問題点もいくつかあります。今回の記事では、私の経験を踏まえた私見を紹介させていただきます。同様のお仕事をしている看護師様、医療従事者様方に参考にしていただければと存じます。

①看護の現場での動画や映像の使用とは?

私が看護師として現場で働きながら率直に思うこととして、動画や映像はとても便利だと、本当に日々実感しています。そう便利だと感じる一方で、プライバシーへの配慮も同時に考えなければなりません。
以前は、看護師が保護室に入室して患者の観察をしていました。
しかし、不穏患者と看護師の接触回数が増えることは看護師が暴力にさらされる機会を増やすことに繋がり、患者と看護師の両方にとって不利益なことです。そうしたリスクのある接触回数を減らすことは、患者と看護師の両方を守ることにつながりますが、いくら安全のためといっても24時間ビデオカメラで監視され続ける患者はどうなのでしょう?
いい心境ではないのではないでしょうか?私が患者の立場であれば安全のためと説明されていようが、24時間ビデオカメラで監視され続ける環境には耐えられないと思います。
精神科病棟だけではありません。在宅や介護の現場では見守りカメラによる遠隔監視が導入されていました。
家や施設に見守りカメラを置くことで、遠方から要介護者の様子を確認することができます。通話機能が備わっている見守りカメラもありますので、要介護者にとっても安心です。
特に認知症の高齢者は転倒したり、異食行為をしたりするため目が離せません。24時間体制でスタッフや家族が見守るのが理想ですが、現場の人手不足を鑑みると非現実的です。時には、要介護者の家族から「カメラで監視する犯罪者のようじゃないか!虐待だ!」という意見をいただくことがあります。しかし、私としては一人の看護師として、事故や生命の危機に陥る可能性があるので、カメラの使用はやむを得ない
と考えています。最近のカメラ映像の高画質化や、それを受信する回線スピードの高速化によって、もしも異常が観察できた場合、どういう状況で何がどうなったか瞬時に得られる情報量が多く、事前準備も明確化され対処の効率もあがるのです。
しかし、精神科同様に自分が要介護者の立場であれば24時間カメラを向けられているのはストレスだと思います。このように精神科や在宅・介護の現場では動画や映像の導入によって、患者の安全の確保や現場の人手不足の対策に貢献しているわけです。

しかし一方で、倫理的問題も存在し、良い面も悪い面もあるといった、一概には決められない課題があると思います。

②看護学生、新人看護師の教育に用いられる動画や映像

誰かにものを教えたり、指導したりする場面で動画や映像はとても便利です。これはもちろん看護師という職種も例外ではありません。私が看護学生時代でも講義に教材DVDなどによる動画が使用されていました。技術演習などは、口頭や配布されるプリントの文章のみでは、どうしても仕事の流れや実際の感覚がわかりにくいので、それを動画で確認できるのは大変ありがたかったです。
演習の時間に入る前に教材DVDの動画を見ておくことで看護技術のイメージをつかみやすくすることができました。教材DVDが導入される以前は「とにかくやって覚えなさい!」と指導されるケースが多く、なかなか要領を得ずに苦労する学生も多かったと聞きます。
また、実際に演習を行う際にはビデオカメラでその様子を撮影することがあります。撮影したVTRを見ながら演習を振り返ることができ、フィードバックがより効果的になりました。
私も看護学生だった頃、ぎこちない手技で看護技術の演習に取り組む自分自身を収めた動画を見ました。未熟な技術を恥ずかしく思う反面、教材DVDと見比べてみることで効果的に看護技術の向上に取り組めたように思います。
学校だけでなく、新人教育でも映像DVDを使われます。
看護師の新人教育の場でも看護学校同様に教材DVDが用いられます。大きな大学病院や総合病院であれば院内限定でeラーニングによる自己学習も実施されています。
私は新人看護師の頃、技術の習得が遅く先輩看護師に何度も同じ指摘をされていました。同じ指摘をされていると改めてその技術に関する質問をすることがためらわれるので、eラーニングでの自己学習は大変ありがたい存在だと感じました。これらの映像・動画の活用は、新人看護師・指導者の看護師の両方にとってメリットになります。
未習得の看護技術の見学や見守り下での実践をしたい看護師が、忙しく働く先輩看護師に声をかけ、「後からにして!」「何で今言うの!?」と叱責されて人間関係に疲弊する場面も減るでしょう。実際に動画コンテンツでの学習を実践した後輩の新人看護師に感想を聞いてみると、「複雑な看護技術や経験できる機会の少ない看護技術の学習に役に立つ」と好感触でした。
また、日々アップデートされる看護技術の最新のエビデンスを学ぶという意味では、経験のある看護師も新人指導を通して自分の知識のアップデートに役立ちます。このようにあらゆる意味において、動画や映像は教育の現場で有効活用されていると私自身日々実感しているところです。

③一方で映像・動画を用いる課題も

上述の通り、動画や映像の導入によって医療や教育の現場に有用な変化をもたらしました。しかし、現状の動画や映像にも課題があります。それは、先に触れたプライバシーに関する倫理的問題や動画、映像が一方向性であるという課題です。
精神科にしても在宅・介護の現場にしても動画や映像の利用は看護師・患者の安全や人手不足解消には欠かせない存在です。その一方で、監視される側のプライバシーは切っても切り離せない問題です。
私のいた精神科病棟の保護室は、6畳ほどの部屋に備え付けのトイレがあるのみです。保護室のビデオカメラにトイレは映らない角度に設置され最低限の配慮はされているものの、ほぼ24時間監視されプライバシーが皆無な状況。この状況を苦痛に感じる患者もいるでしょう。在宅・介護現場の見守りカメラも同様に、見守りカメラに監視されていることを快く思わない要介護者もいるかと思います。カメラによる監視を快く思わない家族がいるのも事実です。
動画や映像による監視や見守りが普及するにあたり、動画データの流出のリスクも高まります。私は動画や映像の取り扱いに関する教育は医療倫理の教育の一端としてわずかに触れた程度しか受けていません。重大なプライバシーに関わる動画や映像を日常の業務で扱うことはとても気を使います。
「本当にカメラで監視しなければならない場面なのだろうか?」
「不必要に患者のプライバシーを侵害していないだろうか?」
このように動画や映像の必要性とプライバシーの問題との間で葛藤を感じることもあります。今後はデータ管理のセキュリティの充実、動画や映像を扱う医療者の倫理教育が課題になるでしょう。
現在医療や教育の現場で使用されている動画や映像は、既に完成されたコンテンツの視聴あるいはリアルタイムで撮影された映像を一方向的に視聴するのに限定されます。
例えば、在宅・介護の現場の見守りカメラは遠隔で高齢者の様子を確認できるものの、それを確認する人間が映像から異常を察知して行動しなければ事故を防ぐことはできません。一方向的に動画や映像を医療者が使用することに限られており、使用者の裁量によって結果が左右されてしまいます。
そのような動画や映像の一方向性の解消を可能にする鍵は5Gの医療への導入ではないでしょうか?
5Gによる高速大容量かつ遅延が少ない通信を医療現場に導入できれば、より少ない人数で安全かつ質の高い医療の提供が期待できます。在宅・介護の現場であれば、カメラによる一方向的な監視だけではなく要介護者の転倒や異変を感知し即座に知らせる仕組みができます。
教育の現場では、例えば採血の演習に使用されるモデルとビデオカメラが同時接続されたとします。演習後の振り返りとして撮影した映像を見ながら、モデルから「〇分○秒の時に血管を突き破ってしまいました。次は逆血があったら角度を浅くして内筒を進めるようにしてください。」といったフィードバックがもらえるようになると演習がより効果的になると思います。
団塊世代が後期高齢者となる対策の一手としても医療現場での動画や映像の活用の普及と進展が求められるでしょう。
それと同時に映像や動画を適切に扱うための倫理教育の充実も課題になるのではないかと思います。現場へのさらなる映像・動画の導入は進んでいくと思いますが、新たな可能性と既存問題の解決を同時に抱えているのも事実です。
しかし、大きい視点では少子高齢化に伴い人手不足を解決する上で、5G時代の有効的な映像・動画の利用が不可欠になるでしょう。それには、医療業界全体で知識や技術に対する理解と議論がさらに必要になると思います。

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